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2015/05/10(日)

つくるビルゼミコラム vol.8 「わたくしこういうものです~はじめましての名刺」

つくるビルゼミコラム5月「わたくしこういうものです~はじめましての名刺」
平田剛志


 4月は入学、入社、転勤、引越な どで初めての出会いが多い季節です。そんな初対面の挨拶で行うことといえば自己紹介です。新しい環境になると誰もが多かれ少なかれ自分を紹介しなければ何者であるかがわかりません。しかし、この自己紹介という通過儀礼は緊張を要し、人見知りの私にとっては苦手なことの一つです。

 その点、 名刺交換による自己紹介は、名刺という紙を渡す行為を取り行う儀式なので、動作や行為に注意や神経を向けているため、緊張を逸らすことができます。また、 多少声が小さくても、紙に名前が書いてあるので聞き取れなかった時でも互いに見て確認をすることができます。また、住所に見覚えがあったり、デザインや紙が凝っていれば、そのエピソードをお伺いするなど、相手のことをお聞きする材料にもなり、会話を続けることも可能です。

 とはいえ、名刺を見るのは一瞬のこと、その後は打ち合わせや雑談・歓談へと続きます。頂いた名刺は名刺ケースやファイルにしまい込まれ、あるいは机や引き出しの奥深くということもあるのではないでしょうか。それは、名刺が基本的に「はじめまして」の消耗品・備品であることが原因かもしれません。初対面以降はメールや電話あるいはSNSなどでのやり取りが中心になり、名刺を見る機会はほとんどないからです。

 しかし、名刺は個人情報の記載されたただの紙ではありません。名刺にはデザイン、レイアウト、紙の種類、職種、役職、住所、電話番号、メールアドレス、その他事項などなど、その人ならではの情報や余白があり、そこに初めての印象や経験もまた名刺とともに記憶されているからです。そこで、4月のつくるビルゼミでは、「わたくしこういうものです~はじめま しての名刺」と題して、参加者の方々にお気に入りの名刺をご持参頂き、そのエピソードなどをお聞きしました。ご持参頂いた名刺は、大学の教員・先輩・同級生・後輩から発明家のドクター中松まで、さまざまな職種・年齢の方の名刺が集まりました。

 しかしながら、コラムでの名刺の紹介はゼミ参加者との関係性や個人情報にまつわる点が多いため割愛をさせて頂き、代わりに筆者の名刺の変遷をご紹介することで、レポートに代えたいと思います。なお、連絡先情報については一部加工しておりますことご了承ください。

 さて、はじめて名刺をもったのはいつでしょうか。私の場合は、初めて就職をした時でした【図1】。片面印刷・縦フォーマットに法人名、配属部署・役職名、名前、住所・電番番号・メールアドレス、URLという基本情報が記載されています。フォーマットは決められていたので、デザインはとくに凝ったものではありませんでした。あまり配ったことはないと記憶しています。

fig.1

図1

 


 続いて、転職をした際に作成して頂いた名刺が【図2a, 2b】になります。こちらは初めて封を開けた時に、横フォーマット、白地に緑字のシンプルなデザインに佇まいの美しさを感じ、身が引き締まったことを憶えています。両面印刷で表面は企業のロゴ、裏面に個人・企業情報がバイリンガルで記載されています。英語と日本語の組み合わせもバランスよく、字の配置もうるさ過ぎません。名刺をお渡ししたときに、緑のフォントの美しさをたびたびご指摘頂いたことがとてもうれしく印象に残っています。

fig.2a

図2a

fig.2b

図2b


 続いて、【図3a, 3b】は再び転職をした際に自分で作成した個人名刺です。
両面印刷・横フォーマットで表面に名前のみ、裏面に住所、電話番号、メールアドレスをバイリンガルでまとめました。自分で名刺を作成するにあたって検討し た事項を述べたいと思います。まずフォーマットですが、横判にしたのは紙の面積が広く受取りやすいのではないかと考えたためです。続いて文字ですが、日本語の歴史的な特性から縦書きの方がバランスよく見え、英語は横書きが最適です。両者が混在していると、見にくくなるのは否めません。そこで、表面は横判に名前を縦書きし、裏面は情報量の多い英数字を横書きでまとめました。それにしても、京都の地名は長いので、日本語・英語ともにレイアウトには苦労します。なお、職種・肩書き表記がないのは、転職をたびたびしてきたこと、批評・キュレーションなどさまざまなことをしており、限定を避けるために職種を付けませんでした。また、名刺は1人の人間の自己紹介であり、職業・役職で人と付き合う者ではないという意志表明でもあります。

fig.3a

図3a

fig.3b

図3b


 最後に現職の名刺が【図4】になります。こちらは片面印刷・縦フォーマットになります。勤務先では名刺フォーマットの統一というのはしておらず、私は勤務先で発注が可能であった横と縦の2種類の名刺フォーマットからこちらを選びました。この名刺を選んだ理由は、「MoMAK」と太字で大きく書かれたロゴのような英字でした。たびたび 「MoMAK」とはなんですかと聞かれる方がいて、その説明で会話が始まることもあります。残念ながら「MoMAK」が「Tne National Museum of Modern Art, Kyoto(京都国立近代美術館)」の略称であることはほとんど知られていないのですが、浸透していないからこそ「?」を与える名刺として有効ではないか と、最近ではおもしろく思っています。

fig.4

図4


  さて、今回もだいぶ長くなってしまいましたので、名刺の保存や管理方法については別の機会に譲りたいと思います。以上、筆者がこれまで使用してきた4種類の名刺を見てきました。4種類の名刺はそれぞれ人と人との間を繋ぎ、多くの仕事や交流へと発展していきました。これまで私は国内外、何百人もの方々に名刺を渡してきたことになります。これから私はいくつ名刺を持つのでしょうか。そして、その名刺はどんなデザインで、どのような情報が記載されるのでしょうか。新たな名刺を持つことは、新しい仕事、新しい人間関係、新しい人生の始まりです。それは、緊張と不安を伴うものですが、1枚の名刺が繋ぐ未来を楽しみに今日も「新しい人」に出会う喜びを噛みしめたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。