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2015/03/11(水)

つくるビルゼミコラム vol.6 「Kyoto Art Mapの使い方」

つくるビルゼミコラム3月「Kyoto Art Mapの使い方」
平田剛志

 目的地に向かう経路は一つではありません。学校や職場、最寄り駅やスーパーマーケットまでの行き方が人によって異なるように、人はいくつもの選択肢のなかから自分が決めたルートを進んでいるのです。
 それはまた、ギャラリー巡りも同じです。東京、名古屋、京都、大阪、神戸など都市には数多くのギャラリーがありますが、これらのギャラリーを日頃の仕事や雑事の合間に効率よく回るには時間のやりくりだけでなく、ギャラリーのまわり方・経路が重要になります。そして、経験を積んだギャラリー巡礼者ならば最寄り駅(地点)からギャラリーへの最短、最安経路、よく利用する駐輪場・駐車場、愛用のカフェなどギャラリー巡りをする人ならではの街歩きの方法があるのではないでしょうか。
 そこで、今月のつくるビルゼミでは、日頃京都でどのように美術館・ギャラリー・アート関係のスペースを回っているのか、具体的なギャラリー巡りのルートを共有することで、日頃の展覧会鑑賞をより充実させる機会としました。その視覚化の方法として、京都市内のギャラリー等の情報が掲載された『Kyoto Art Map 2015』を用いました。Kyoto Art Mapは、1998年に私営の現代美術ギャラリー22軒によって起ち上げられたイベントでほぼ毎年1回、京都市内のギャラリーがマッピングされたKyoto Art Mapの発行、合同展覧会や関連イベントの開催を行なっています。折しも今年初頭には2015年版が刊行されました。

 それでは、ギャラリールートを見ていきましょう。今回のゼミ参加者は10名。内2名はギャラリー巡り初心者ということで、ルート発表は8名の方にして頂きました。参加者のルートは表1のようになりました。

ルート

 8名の方の出発点は、仕事先や自宅などから出発点を決めて頂き、スタート地点としました。なお、複数のルートがある場合は、日を改めて回っている場合のルートです。やはり、鴨川から東西に分かれることがわかります。移動手段は、自転車の方が6名、徒歩や電車・バスの方が2名でした。ただ、京都の道路事情から河原町~烏丸地域を巡る場合は、駐輪場に自転車を停めて、徒歩で回るケースもありました。

 まず、エリアですが、参加者のルートから三条通りが基点であることがわかります。三条通は、交通の利便性がよく、周囲に複数のアートスポットがあるためと思われます。今回のルート中、最西端は二条の京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、最東端はギャラリーすずきです。ところが、このギャラリーすずきへ行かれる方は半分の4名で、参加者の多くが目指すのは「虹」でした。虹を越えた先へは、三条通りに横断歩道が遠く迂回せざるを得ないこと、坂道のためなどから、「虹」を岡崎エリアの終点にするケースが多いのでした。三条通りはあたかも国境線のように、行動を制限している様相がわかります。ぜひ「虹」の向こうへも足を延ばしてほしいものです。

 ギャラリー巡りの時間ですが、空いている時間や仕事帰りに回っている方、休日に時間をかけて回られる方など、時間や予定をやりくりしていることがわかります。なかには、食事はほとんどとらずに回るという方もいました。ランナーズハイならぬギャラリーズハイになり、食事を取らなくても回れてしまうということでした。かくいう筆者もその一人だったりします。

 リピート率の高いギャラリーの理由としては、過去に展覧会をやった、友人知人がスタッフにいる、お茶を出してくれるなど、接客率が高いギャラリーほどリピート率が高いことがわかりました。これは、お茶出しサービスがほとんどない関東とは異なる点かもしれません。ギャラリーは展覧会を見るだけでなく、情報交換の場でもあることを示しています。私自身の反省として、よくギャラリーで展示作品と関係のない話や雑談をしてしまうこともしばしばですが、これは美術作品があるからこそ、会話が生まれることを忘れてはいけないと思います。会社や学校ではいきなり人と話せなくても、ギャラリーでは「商品」としての美術作品があるからこそ、そこに会話や交流が生まれるのです。つまり、よい美術作品とは、空間にあるだけで会話や交流を生み出す役割や機能を有しているのです。  以上のように、ギャラリー巡りのルートを簡単に見てきましたが、ルートに正解はありません。今回は8名の方の趣味・関心が反映したルートでしかなく、そのルートも変更・更新されていくでしょう。今後はさらに異なる参加者のルートを収集し、京都アートマップの行動地図を広げていければと考えています。

 近年、各地の美術館や都市の中で国際芸術展・芸術祭やアートプロジェクトが行われ、展覧会は身近になっているのではないでしょうか。しかし、美術館や国際展の多くは有料で、敷居の高さはまだあります。一方、ギャラリーは都市のなかにあって、無料で見ることができ、日頃から見て回るだけで毎日が芸術祭とは言えないでしょうか。通勤・通学電車のなかで読書をするように、一日の空いた時間にギャラリー巡りを取り入れてみてはいかがでしょうか。繰り返しますが、どんなルートでも正解はありません。カフェやバー、レストランなどで休みつつ、あなたなりにギャラリーを巡ってみてほしいのです。普段は行かなかったギャラリー、通らなかった道路や路地を経ていくうち、都市は思いもかけない風景やお店、人との出会いをもたらしてくれるでしょう。それは、どんなに検索エンジンを探しても見つからない「発見」だと私は思うのです。

つくるビルサイトの調整により、掲載が遅れました事をお詫び致します。
 2015年3月11日投稿
 つくるビル運営事務局