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2016/02/10(水)

つくるビルゼミコラム vol.17 美術夜話 第5夜 戦後70年特別展「人間らしく、戦争を生き抜く」&2015 戦後70年展を視る

つくるビルゼミコラムvol.17 美術夜話第5夜 
戦後70年特別展「人間らしく、戦争を生き抜く」&2015 戦後70年展を視る
山邊桜子(画家/美術夜話第5夜ゲスト・ファシリテーター)

 昨年、2015年は戦後70年を機に全国の博物館、美術館で「戦争」をテーマとした展覧会が相次ぎ開催されました。

〈戦後70年関連展覧会〉

誰がためにたたかう?(東京国立近代美術館)5/26-9/13

慶應義塾と戦争Ⅲ「慶應義塾の昭和二十年」展(慶應義塾大学)6月1日~8月6日

■発掘!知られざる原爆の図(丸木美術館)6/3-9/12

■マンガと戦争展 6つの視点と3人の原画から(京都国際マンガミュージアム)6/6-9/6

■広島・長崎 原爆展(アメリカン大学付属美術館・米国ワシントンD.C.)6/13-8/16

■浮世絵の戦争画―国芳・芳年・清親―(太田記念美術館) 7/1-7/26

■非戦70年 ちひろ・平和への願い(ちひろ美術館・東京) 7/5-10/25

■ドイツと日本を結ぶもの 日独修好150年の歴史(国立歴史民俗博物館) 7/7-9/6

■日韓近代美術家のまなざし―「朝鮮」で描く(岐阜県美術館) 7/9-8/23

■戦後70年記念 20世紀日本美術館再見 1940年代(三重県立美術館) 7/11-9/27

■ケーテ・コルヴィッツ展(フィリア美術館) 7/11-9/29

■戦後70年記念特別展示 戦争と美術 岡倉天心と日本美術院の作家たち  ポール・ジャクレーと新版画 (横浜美術館コレクション展2015年度第2期)7/11-10/18

■三橋國民 鎮魂70年目の夏(町田市立博物館) 7/14-8/30

■戦後70年特別企画 土門拳が視た昭和(土門拳記念館) 7/15-9/28

■戦後70年 無言館展 画布に遺した青春(富山県立近代美術館) 7/18-9/3

■愛と祈り―戦後70年―(大垣市守屋多々志美術館) 7/18-9/23

■画家たちと戦争:彼らはいかにして生きぬいたのか(名古屋市美術館) 7/18-9/23

■被爆70周年:ヒロシマを見つめる三部作 第一部(広島市現代美術館) 7/18-9/27

■戦争と平和―伝えたかった日本(IZU PHOTO MUSEUM) 7/18-1/31

■戦後70年、被爆70年―瀬戸内寂聴展(長崎県美術館) 7/25-8/31

■広島・長崎 被爆70周年 戦争と平和展(広島県立美術館) 7/25-9/13

■戦後70年記念 浜田知明のすべて(熊本県立美術館) 8/1-9/13

■戦後美術の出発展(群馬県立美術館)9/4-11/18

■藤田嗣治、全所蔵作品展示。(東京国立近代美術館)9/19-12/13

■戦争と平和展(長崎県立美術館)9/19-10/25

■もうひとつの1940年代美術展(栃木県立美術館)10/31-12/23

■原爆の図展(パイオニア・ワークス・米国)11/13-12/20

■今日の反核反戦展2015(丸木美術館)11/18-2016/1/16

■「戦争画STUDIES」展(東京都美術館ギャラリーB)12/9-12/20

 ここに挙げるものはほんの一例ですが、私自身見に行けなかった展示も多く気になっていたので、皆さんが見た展示や体験したことについて聞きたいと思い、「戦後70年」を今回のテーマとさせていただきました。また、美術夜話第一夜「被爆70周年 ヒロシマを見つめる三部作 第1部 ライフ=ワーク」のコラムにおいて、「絵を描くこととは、再び「経験」を思い返すことでもある」という平田さんの言葉がありますが、これを読んだ時には自分にとってのライフ=ワークについて考えさせられました。戦争真っ只中の時代に生きていたらどうだったのだろうという思いもあり、あらためて戦争にスポットをあててみたいと思いました。

 じっさいに戦時中に生きていたら、戦争絵師としてでも描く道を選ぶことになりそうだというひともいました。
(考えても考えても、やはりその状況になってみないとわからないですが、私自身は「描く」という手段にこだわらないような気がします。)そんな話や展覧会の話のほかに、身の周りに右翼的な考え(戦争に対し必ずしも反対でない)のひとが実はけっこう多いという話題になったのですが、そのさいに感じたのは、戦争を経験しているひとたちがどんどん少なくなっていること・それにより戦争の悲惨さよりも、やられたらやり返すことの意識の方が大きくなっていってるのかもしれないということでした。日本にとって敗戦後70年、戦争が起こらなかったのは憲法の存在はもちろんありますが、体験をした人たちの存在がきっと大きかったのだと思います。

 歴史を学ぶことは過去の過ちを繰り返さないために必要ですが、それでも繰り返されてしまうものなのでしょうか。なにが正しくなにが過ちかは判断が難しいですが、直接体験した人たちから話を伺える時代ではなくなるからこそ、形に残る作品をもって事実を伝えていくことは重要であると感じます。「戦後70年」という視点で振り返ることで、これからを見つめるきっかけになった展覧会やゼミに参加できたこと、コラムを書く機会をいただけたことに感謝しています。

 

 



つくるビルゼミコラムvol.17 美術夜話第5夜 
戦後70年特別展「人間らしく、戦争を生き抜く」&2015 戦後70年展を視る
平田剛志

 2016年最初のつくるビルゼミ・美術夜話第5夜は、画家・山邊桜子さんをゲスト・ファシリテーターに迎え、京都大学総合博物館にて開催された戦後70年特別展「人間らしく、戦争を生き抜く」(2015年11月25日~2016年1月10日)を中心に、戦後70年・2015年に開催されたさまざまな展覧会について振り返りました。

 つくるビルゼミでは戦争関連のテーマとして2015年9月に広島市現代美術館で開催された被爆70周年:ヒロシマを見つめる三部作第1部「ライフ=ワーク」展を取り上げています。「ライフ=ワーク」展が「被爆」、今回が「戦争」というテーマで少し角度を変えての試みとなりました。折しも1月25日発売の芸術批評誌『REAR』では、「2015 戦争を視る」と題して戦後70年の展覧会、映画などを振り返る特集が組まれました。つまり、雑誌で特集を組むことができるほど、戦後70年展が多く開催されたということでしょう。つくるビルゼミでも参加者の皆さんから戦後70年展および戦争関連の作品についてさまざまな意見・感想がでました。
 では、2015年に戦後70年展は多かったのでしょうか。先の『REAR』では、以下の展覧会が取り上げられています。

●日韓近代美術家のまなざし―「朝鮮」で描く(2015年4月4日~5月8日・神奈川県立近代美術館 葉山ほか)
●館蔵品展 近代日本の社会と絵画 戦争の表象(2015年4月11日~6月7日、板橋区立美術館)
●衣服が語る戦争(2015年6月10日~8月31日、文化学園服飾博物館)
●小企画展 イマジン―争いのない世界へ(2015年6月11日~9月1日、福岡アジア美術館)
●戦後70年特別企画展 ニシムイ―太陽のキャンバス―(2015年6月13日~2016年3月13日、沖縄県立博物館・美術館)
●戦後70年記念 20世紀日本美術再見 1940年代(2015年7月11日~9月27日、三重県立美術館)
●画家たちと戦争:彼らはいかにして生きぬいたのか(2015年7月18日~9月23日、名古屋市美術館)
●戦後70年 無言館展 画布に遺した青春(2015年7月18日~9月3日、富山県立近代美術館)
●戦争と平和――伝えたかった日本(2015年7月18日~2016年1月31日、IZU PHOTO MUSEUM)
●広島・長崎 被爆70周年 戦争と平和展(2015年7月25日~9月13日・広島県立美術館、2015年9月20日~10月25日・長崎県美術館)
●戦後70年記念 浜田知明のすべて(2015年8月1日~9月13日、熊本県立美術館)
●戦後日本美術の出発 1945-1955―画家たちは「自由」をどう表現したか―(2015年9月19日~11月3日、群馬県立近代美術館)
●MOMATコレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。(2015年9月19日~12月13日、東京国立近代美術館)
●戦後70年:もうひとつの1940年代美術――戦争から、復興・再生へ(2015年10月31日~12月23日、栃木県立美術館)


 上記だけで14の展覧会が1年を通じて開催されました。もちろん上記以外にも全国の博物館、ギャラリーなどでも数多くの戦後70年展が開催されました。いったいなぜこれほど多くの戦争関連の展覧会が開催されたのでしょうか。生誕・没後100年や120年、琳派400年などという数字に較べれば、「戦後70年」はけっしてキリがいい数字ではありません。それでも、戦後70年にこれだけ多くの展覧会が開催されたのには、戦争体験者の減少に伴い、いま「戦争」の時代を振り返り、伝え残す思いや熱意が感じられます。
 それでは、10年前の戦後60年ではどうだったでしょうか。2005年に戦後60周年記念の展覧会は2015年と同様に数多く開催されたのでしょうか。試みに調べたところ、以下のような展覧会がありました。


●初版による ゴヤ版画集『戦争の惨禍』(2005年1月4日~3月6日、伊丹市立美術館)
●東京空襲60年:犠牲者の軌跡(2005年1月14日~4月10日、東京都江戸東京博物館)
●無言館 遺された絵画展:戦後60年特別企画(2005年2月5日~3月21日、東京ステーションギャラリーほか)
●そして、未来へ:ヒロシマ賞受賞作家のまなざし 被爆60周年特別展(2005年4月16日~6月26日、広島市現代美術館)
●シリン・ネシャット展:第6回ヒロシマ賞受賞記念(2005年7月23日~10月16日、広島市現代美術館)
●所蔵名品展 戦後60年・おのみちの夏(2005年8月18日~9月4日、尾道市立美術館)
●昭和の美術:1945年まで 〈目的芸術〉の軌跡 戦後60年特別企画(2005年11月3日~12月11日、新潟県立近代美術館)


 いかがでしょうか。2015年と較べると格段に戦争関連の展覧会数が少ないのです。恣意的に選んだわけではなく、2005年は2015年と較べると「戦後60周年」企画は少なかったことがわかります。10年という時間の経過は、戦争を伝えることの重要さと真剣さの度合いを増しているような気がします。いや、10年という単位ではなく、1年1日という単位で、この時代が「戦争」へと進行しないよう、私たちは「戦後」を生き続けるべく考え、行動しなければならないと思いを強くします。