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2015/12/10(木)

つくるビルゼミコラム vol.15 美術夜話 第3夜 「琳派戦線2015――琳派400年とは何だったのか」

つくるビルゼミコラム vol.15 美術夜話 第3夜
「琳派戦線2015――琳派400年とは何だったのか」

山本雄教(美術作家/美術夜話第3夜ゲスト・ファシリテーター)

 今回私がゼミのファシリテーターを務め感じたのは、「伝えることの難しさ」でした。これはゼミのファシリテーターが難しいということではなく、今回テーマとした「琳派400年記念祭」に関することです。

  今回私が「琳派400年記念祭」をテーマにしたのは、いたるところで開催される「琳派」と銘打った展覧会や催しにどこかネガティブな印象を持っていたから です。もちろん中にはよい試みもあったとは思いますが、多くが「琳派」という名前に乗っかっているようにしか見えず、さらに私自身もそれらの催しの一部に作家として参加している部分もあり、もやもやとした気持ちを抱えていました。

 しかし批判的な気持ちを持ちながらも、「琳派400年記念祭」がどういったものなのか根本的には分かっておらず、「琳派」自体に関する認識もろくにありませんでした。何も知らないのに一方的にネガティブな気持ちを抱えていても仕方ないと思い、今一度知ることのできる機会となるのではないかとゼミのテーマにさせてもらったのです。

 そして実際に 「琳派400年記念祭」を調べていくと、自分の知らなかった情報がたくさん出てきました。高階秀爾、辻惟雄、コシノジュンコといったビッグネームが発起人であること、根本には「日本の美意識の再認識」という大きなテーマがあるということ、ホームページに掲載されているものだけで2015年4月から現在までにかけて200もの記念祭に関する催しが行われていること、などなど。

 見ていくと、今回の「琳派400年記念祭」のもっとも重要な目的は、400年という区切り(この区切り自体も捉え方によるものでしょうが)を機に、改めて「琳派」を再認識し、ひいてはそれが前述した「日本の美意識を再認識」することに繋がるといったものでしょう。さて、そしてそれは現状成し遂げられているのでしょうか? 私の肌感覚ではやはり「琳派」と名のつくものが期間限定で溢れているだけで、その根本的な部分が深まっているようには思えません。京都国立近代美術館で開催された展覧会名を借りるとするならば、たくさんの「琳派イメージ」が生み出されたといいますか…。再認識というよりは再消費されたといいますか…。

  もちろん私はこの「琳派400年記念祭」を追いかけていたわけではありませんし、おそらく「再認識」に繋がるような有意義な催しもあったはずです。しかし 日本画出身で作家活動を続ける私のような人間がそうなのですから、多くの人にとっては「妙に今年は琳派琳派いってるなぁ~」ぐらいの印象で、中身があったとしても届いていないのです。これがはじめに挙げた「伝えることの難しさ」です。「琳派400年記念祭」を調べた結果、私の頭に残ったのはこの催しに対する批判などではなく、伝える側がどうしたらいいんだろうという苦しみの部分でした。やはりこの200にも及ぶ催しの乱発は、そういった本質の部分を逆に見えづらくさせてしまったのではないかなぁという気が個人的にはしています。

 さて、今回の「琳派400年記念祭」が、「日本の美意識の再認識」という壮大なテーマに辿り着いたとは思えませんが、小さな影響をぽつぽつとは与えているのだろうなと思っています。例えば私は今回のことがなければ 「琳派」について知識を深める機会がなかったでしょうから、あくまでも私という一人の人間に関していうならば「琳派を再認識」したといえるでしょう。

 そ してそんな再認識した私は、来たる2016年1月30日から2月14日まで京都文化博物館で開催予定の、その名も「琳派FOREVER」(すごいタイト ル…)という選抜展に参加します。今回のゼミで調べて得たことを活かした作品を出品する予定ですので、よろしければぜひご高覧いただければと思います。ということで、結局のところ長々と己の展覧会の宣伝の前振りだったんかいということで…失礼します。


つくるビルゼミコラム vol.15 美術夜話 第3夜
「琳派戦線2015――琳派400年とは何だったのか」まとめ

平田剛志

 
今年の京都は「琳派400年」ということで、数多くの関連行事が開催されました。琳派および琳派400年祭の経緯や概要については、今回のファシリテーター山本雄教さんのテキストに譲り、本コラムでは、そもそも過去にどのような琳派の展覧会が開催されてきたのかをまとめてみたいと思います。それによって、「琳派イメージ」の流れが見えてくるかもしれません。
 なお、琳派概念の歴史性については、加藤弘子「「琳派」の現在――流派概念の限界と「琳派」「RIMPA」の可能性」(http://artscape.jp/focus/10114909_1635.html)が詳細かつ丁寧にまとめられておりますので、ご参照ください。

 

琳派展覧会史

■宗達光琳派展覧会
1951年4月7日-5月6日:東京国立博物館

琳派名品展 光悦宗達 光琳 乾山 抱一
1966年10月22日-11月6日:徳川美術館

宗達光琳派名作展
1967年4月29日-5月14日:福岡文化会館美術館

琳派の芸術 光悦・宗達・光琳・乾山名作展
1969年10月4日-10月26日:石川県美術館

創立百年記念特別展「琳派」
1972年10月10日-12月3日:東京国立博物館

琳派作品展
1985年10月22日-12月22日:出光美術館

琳派の意匠 (デザイン)
1986年10月10日-11月9日:姫路市立美術館

日本の美「琳派」:宗達・光琳・抱一から現代まで
1989年10月7日-11月5日:福岡市美術館

琳派:版と型の展開
1992年10月10日-11月29日:町田市国際版画美術館

琳派
1993年11月23日-12月19日:出光美術館

琳派:美の継承 宗達・光琳・抱一・其一
1994年4月23日-5月22日名古屋市博物館

琳派:日本美の精華
1994年11月24日-12月6日:京都高島屋
1995年1月3日-1月16日:東京・松屋銀座

日本の美「琳派」展一九九六 京都・大坂・江戸に咲き乱れた日本美の華
1996年1月3日-1月16日:福岡天神・大丸
1996年1月25日-2月6日:東京・日本橋高島屋
1996年2月9日-2月18日:名古屋三越栄本店
1996年3月13日-4月7日:奈良そごう美術館

琳派 造形と伝承展 宗達・光琳から抱一・基一まで
1997年4月5日-5月25日:静嘉堂文庫美術館

琳派空間 生き続ける琳派絵画・工芸・生け花の競演(コラボレーション) Bunkamura10周年特別展
1999年10月2日-10月24日:Bunkamuraザ・ミュージアム

館蔵 琳派の美
1999年11月16日-2000年2月13日:出光美術館

琳派 : Rimpa
2004年8月21日-10月3日:東京国立近代美術館 ,

国宝風神雷神図屏風 宗達・光琳・抱一琳派芸術の継承と創造
2006年9月9日-10月1日:出光美術館

琳派 與衆愛玩
2007年4月3日-6月10日:畠山記念館

大琳派展 継承と変奏 尾形光琳生誕三五○周年記念
2008年10月7日-11月16日:東京国立博物館

琳派芸術
2012年10月27日-12月16日:出光美術館

尾形光琳300年忌記念特別展「燕子花と紅白梅」 光琳アート -光琳と現代美術-
2015年2月4日-3月3日:MOA美術館

京に生きる琳派の美 現代作家200人による日本画・工芸展
2015年4月25日-5月17日:京都文化博物館

琳派と秋の彩り 琳派400年記念 特別展
2015年9月1日-10月25日:山種美術館

京都画壇にみる琳派のエッセンス ユーモアとウィット 琳派400年記念特別企画展
2015年10月7日-11月29日:京都府立堂本印象美術館

琳派イメージ展 琳派四〇〇年記念
2015年10月9日-11月23日:京都国立近代美術館

琳派 京 (みやこ) を彩る
2015年10月10日-11月23日:京都国立博物館平成新和館

琳派光臨―近世・近代・現代の「琳派コード」を巡って
2016年1月14日-2月14日:京都市美術館

琳派400年記念 新鋭選抜展 -琳派FOREVER
2016年1月30日-2月14日:京都文化博物館

 

以上です。
すべてを網羅したわけではありませんが、上記のような展覧会が開催されてきました。

 これによってわかるのは、琳派の展覧会はほぼ東京・関東圏で開催されてきたという事実です。京都が発祥でありながら、まとまった展覧会は1994年の髙島屋しかないのです。
今回の「琳派400年記念祭」という行事は、ともすると対外的な京都ブランドの発信に見えますが、実は京都の人に向けたルーツ発見の祭りだったのかもしれません。